心臓ペースメーカ植え込み術
心臓のリズムが遅くなる病気には、ペースメーカ治療という有効な治療法があります。
薬物治療はある程度の効果は期待できますが、効果が必ずしも安定しないこと、別種の不整脈が起こりやすくなるなどの副作用があります。 |
ペースメーカ治療は、電気刺激によって脈拍を調節することで、徐脈性不整脈(以下、徐脈)に伴う疲れやすさや息切れなどの症状を改善させます。ペースメーカ治療は、徐脈を根治するためのものではありません。また、心臓病を予防したり、心臓発作を防いだりすることはできません。
ペースメーカ治療では、ペースメーカからのごく弱い電気刺激を利用して脈拍を正常な状態に近づけ、十分な量の血液を体に行き渡らせることで、さまざまな症状を改善させます。
機械自体は、大変信頼性の高い機械なので、故障、誤認識、誤作動、の危険性は極めて低くなっています。
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ペースメーカ植込みは局所麻酔下で行います。まず左右どちらかの鎖骨の皮膚を数センチ切開し、皮下にペースメーカが入る小さなポケットを作ります。次に、鎖骨の下を通る太い静脈に、ペースメーカ本体と心臓を結ぶリードと呼ばれる細い導線を挿入します。リードはペースメーカの種類により2本使用する場合と1本だけ使用する場合があります。最後に、リードをペースメーカ本体につなぎ、本体を皮下のポケットにしまい、切開した部分を縫合して終わりです。手術はおよそ1~2時間で終了します。
合併症を起こさないよう最大限の注意を払って手術を行なっていますが、合併症の発生を皆無にすることは困難です。
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気胸
リードを血管内に入れるときに、肺に傷を付けてしまい、空気が漏れてしまうことがあります。漏れが尐ないときは数日間の安静のみで回復しますが、漏れが多いときには側胸部よりチューブを入れ、漏れた空気を引く治療が必要となります。数日間の入院延長が必要です。 |
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血胸
静脈穿刺法では、まれに静脈や動脈を貫通して刺してしまうことがあり、その際の出血が胸の中に溜まることがあります。 |
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(ペーシング・リードによる) 穿孔
この合併症はごくまれですが、静脈や心臓の中でリードを進める際に、血管の壁、あるいは心臓の壁の一部をリードが貫通して起きます。 |
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出血・血腫
皮膚を切開し、血管にリードを入れなければならないので、ある程度の出血はやむを得ません。通常はせいぜい10~20cc程度の出血のみで治療は必要ありませんが、血液、肝臓、腎臓に疾患のある患者様では、再手術や輸血が必要となることもあります。 |
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タンポナーデ (心臓の外に血液がたまる)
リードを心臓内に留置する際に、心臓の壁に穴が開いてしまった例が報告されています。穴を塞ぐために外科手術が必要となります。ただし頻度は1/10000以下ときわめて稀です。 |
手術中にはさまざまな不整脈が起こる可能性があります。必要に応じて電気ショック、足の血管から一時的な電線を追加する、などの処置を行ないます。 |
血管造影に用いる造影剤でアレルギーを起こすことがあり、きわめて稀ですが死亡例も報告されています。
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ペースメーカー手術で最も重篤な合併症です。ペースメーカーの本体やリードに細菌が付着して感染症がおこると治療は非常に困難で、多くの場合本体やリードを交換しなくてはなりません。本体のみの交換は難しくありませんが、リード交換はしばしば外科手術を必要とし、生命に関わる可能性もあります。手術時に感染を起こさなくとも、身体のどこかに傷がついたときは、そこから細菌が入って本体やリードに取り付いてしまうことがありますので、手術時に問題なかったといって安心はできません。頻度は0。5~2%と報告されています。 |
手術後にリードの位置がずれてしまい、ペースメーカーが正常に作動しなくなることがあります。 |
ペースメーカーによる心臓の収縮は人工的なもので、正常の収縮と比較すれば心臓に無理がかかっています。 |
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ペースメーカは電池で動いており、状況にもよりますが、手術後6~10年くらいで電池が消耗するため、その後は本体部分を交換手術することになります。電池寿命となったときには、機械から警報音が出るようになっていますので、医療機関にご連絡下さい。 |
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ペースメーカを埋め込まれた患者さまは、ご家庭・屋外・病院内など、生活上の注意点(避けるべきもの)がいくつかあり、ペースメーカ手帳に記載されております。 |
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手術後1~2ヶ月間は、ペースメーカを植込んだ側の腕を肩より高く挙げないよう、植込んだ側の手で重い荷物を持たないようご注意下さい。スポーツは手術後3ヶ月間ほどお控え下さい。 |
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植え込み後、安定期に入ったのちは、年1回ほど外来で機械の状態をチェックします。状況に合わせて設定の変更を行うこともあります。 |